令和3年度 盟友の主張

『経営移譲してからの農業』

村上 琢磨

私は玉名市天水町で、農家の長男として育ちました。

私が幼かった頃からみかん、米、ハウスでミニトマトなどを作っていました。今ではトマトのみを作っていますが、当時様々な作物を栽培していた時は、収穫に消毒、手入れなどかなり忙しく大変だったろうということが今ではよくわかります。現在はトマトだけに絞り、57aほどで経営しています。  

私が高校卒業と同時に就農してからは、両親と3人でトマトを作っていました。そして、昨年令和2年1月から経営を引き継ぎ、気持ちも新たに農業に向き合っていこうとしていた矢先に、新型コロナウィルスの拡大があり、収入面でじわじわと厳しくなっていきました。緊急事態宣言などによる居酒屋や、レストラン等の店舗休業で需要が減ったこともあり、価格も当初の想定よりも伸びていきませんでした。現在まで約2年ほど日常生活でも我慢の生活が続いています。お盆や正月に親戚で集まることもなくなって、今自分に何が出来るのかと考えては、結局感染対策を徹底する以外何も出来なのでは?と、悩む生活が日常になりなした。今までであれば、夏はハウスの補修や次のシーズンに向けて、土作りを行いその合間に家族で旅行でも行こうという話もでます。ですが今は、気軽に出掛けることも出来ずにストレスで体調を崩さないか不安ではあります。いつまで続くのかわかりませんが、ワクチン接種が進み早く元の生活に戻ることを願ってばかりです。

現在私の家は、2ヶ所圃場を持っていますが、1ヶ所を平成30年度に耐候性ハウスに建て替えました。竜巻の被害に遭い、今後台風など自然災害の被害も増えてきていたため、どうせならと耐候性ハウスにしようと計画しました。そこは新しく自動潅水装置も導入し栽培管理の向上を目指そうという考えもありました。導入した自動潅水装置の扱いにもまだまだ慣れておらず、勉強の日々です。従来のパイプハウスと違い、耐候性ハウスでは日中の光の入り方が以前のハウスと比べ、かなり少なくなりました。その分ハウス自体の高さもあるため、温度に関しては調節しやすくなったのではないかと感じています。就農してから両親とやってきた栽培管理とは、また違ったやり方が求められているような気がします。特に肥培管理ではその差があるように感じていて、以前とほぼ変わらないような肥料のやり方をしても、樹勢や根の張り方が弱く、満足のいく状態ではないなと悩みます。建て替えのときに基礎石を埋めるために掘り返したり、重機で踏み固めた影響なのか、はっきりしたことはわかりませんが、こういったことで土の中の環境が変わったのだろうと思います。今は夏場の土作りで堆肥等の有機物と微生物を土に混ぜ、太陽熱消毒による土壌の改善を計っている最中です。

また近年、コナジラミを媒介にした黄化葉巻病の被害が増加傾向にあるため、耐候性ハウスの圃場には黄化葉巻病対策に、耐病性品種の「かれん」を試験的に作付けしました。食味や見た目では市場の評価も悪くないので、今後は「かれん」を扱うことが多くなると感じています。今まで経験したことのない品種ということもあり、同じく「かれん」を栽培している先輩農家さんにも話を聞いたり、他の耐病性品種の特徴を調べたりと、これからの参考になるように工夫することが必要です。これまで作っていた「麗容」はかなり作りやすかったと感じています。「かれん」に限らず、耐病性品種は1段目、2段目の落果がひどく、かなりの量が収穫前に廃棄しなければなりませんでした。「かれん」は他の品種に比べ、花の数も多くないのでそこは悩みました。病気に関しては葉カビに若干耐性が低いようです。また最近玉名地域でも、黄化葉巻病と同じくコナジラミを媒介にした黄化病も発生しており、消毒作業には薬剤の使用回数など、今まで以上に気を使うなど経営の難しさを感じています。そういったことを含めても、摘果に掛かる時間短縮や見た目と食味の向上、定植時期を早めに出来たりといったメリットもあります。これからは、両親もあまり無理が出来る年齢でもありません。言い方は悪いですが、手を抜ける所は手を抜いて、簡潔に出来ればと思います。将来的には外国人技能実習制度の活用、栽培面積の再考や、トマトとは違う作物の栽培も視野に入れる必要もあると考えています。なるべく負担にならない経営を目指して努力していきたいと思います。

私が、経営を任されてから1番悩んだのが経費についてです。先に触れたように新型コロナウィルスの影響も大きく、以前のようにトマトの価格が高いというわけでもなく、収入は減りました。ですが農業経営に必要な経費は増えています。特に出荷経費、燃料費そして種苗費の割合が大きいです。その中ですぐにでも削減できそうなのは種苗費くらいしかないなと考えています。肥料費や農薬衛生費はなかなか削減するのは難しいためです。私が就農してから数年は、トマトも種蒔きから始めていました。穂木と台木の種を蒔き、ポットに鉢上げしてから接木、根切りが終わったら定植という流れでした。経費を減らすのなら有効かなとは思いますが、体を休める期間もないので体に負担が掛かることが目に見えています。現実的なものは128穴の接木してある苗を買い、ポットに鉢上げしてから定植するということになると思います。私は今まで3寸ポットの苗を購入していましたが、耐候性ハウスに建て替えたこともあり、今後はこちらのやり方に変えていくつもりです。

経営が変わったといっても家族で協力していくことに変わりなく、相談することも多いでしょう。今までは両親、主に父がこういった経営計画をたてていましたが、これからは私を中心にして農業をやっていくことになります。普段の手入れや仕事の段取りは、今までの経験から何とかなりそうだと感じていますが、経営移譲してからまだ年数も経っていないこともあり、いまはまだ中々慣れていません。これからは果実の肥大や食味向上に効果的な栽培管理のやり方、病害虫に耐病性をもつ品種が多く出てくるかと思います。圃場と自分のやり方に合った栽培管理、経営計画を取り入れていけたらと思います。